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イタリアに16日に着いてからほぼ毎日雨模様。日曜は殊に大雨。それでは映画ね!ということでFedericaお奨めのGomorraを見に行きました。イタリア映画を見るのも本当に久しぶりです。息子は喜劇が好きなので一緒にDVDを見たりしますがこれはNapoliのCamorraを扱ったドキュメンタリーを基にした映画ですからかなり重いはず。。。 SiciliaにはMafia,NapoliにはCamorra, Calabriaには’Ndrangheta(んどらんげた、と発音します)が非合法犯罪組織として活躍し、イタリア南部の各地域を仕切っているというのが私の持っていた知識。実際に何をして生計を立てているのかは知りませんでした。 Mafiaはさすがに歴史があって世界的に活躍しているだけあってMediaにも取り上げられていますが後の二つは多分イタリア以外ではあまり知られてないのではないでしょうか。(*こういうのをチェックするのにWikipediaは役に立ちます。ある項目が何ヶ国語に訳されているのか=それだけ関心がもたれている、又、各国語間の内容にどれだけの違いがあるのか、等。因みに後の二つは中国語には訳されていません。) イタリア北部(といってもToscanaどまり)にしか住んだことが無いので私にとってはこれらの犯罪組織の話は「映画と本」でしか知らない世界でしかありませんでした。 このCamorraを取材し、本にまとめたのがナポリ生まれのジャーナリスト、Roberto Savianoです。 題名は「Gomorra」 (*旧約聖書の創世記に登場する天から滅ぼされた都市の一つ。ソドムとペアになっています Gomorraは2006年に発行されてから大反響を呼び、すでに33ヶ国語に翻訳されているそうですが日本語訳はまだのようです。別のイタリア人の友人いわく「あ、見に行ったの?本は読んだわ。でもフィルムまで見る気がしないのよ、だって救いようの無い題材なんだもの。」 フィルムは5つのエピソードからなっています: -ドン・チーロは犯罪組織のメンバーの家族に「給料」を渡すのがお仕事。どんなに相手から愚痴を聞かされてもプロフェッショナルに応対。 -トトは13歳の男の子。組織の中で活躍するのが彼の夢。使い走りから始まった彼のキャリアを更に進めていくには後戻りのできない選択を迫られます。 -ブライアン・デ・パルマの映画の世界を地で行きたいマルコとチーロは組織に属せず二人だけで同じような犯罪をやっていこうとするのですが、既存組織にとっては邪魔なだけ。。 -ロベルトは大学卒で働く意欲にあふれた青年。フランコが彼に与えた「安定した、しかも儲けの大きい」仕事というのは北部の有毒廃棄物を非合法に埋め立てることでした。 -パスクァーレは腕の立つ仕立て屋。オートクチュールの請負を入札で落とすヤミの縫製工場で働いています。いくら腕が立って長年働いていても支払いの額は変わらずしかも定時には払ってもらえません。この工場と対抗する中国人の縫製工場長から縫製に関するセミナーのオファーがかかりますが、まともに引き受けたら元の職場にはいられません。 登場人物は皆ほとんどナポリ方言を話すので標準イタリア語の字幕付き。(言語学者のFedericaも字幕なしではわからなかったとのこと。) この話を本だけ(画像なし)で読んでいたら私の理解はかなり乏しいものになっていたことでしょう。登場人物が働いている場所(ロベルトを除く)の惨めなことといったら。。。トトの住んでいる家は強制収容所みたいなところです。 マルコとチーロの二人組みは動物みたいに生きています。「今、ここ」でやりたいことをやるだけ。だからてっとりばやく金になるような事をかぎつけるには長けています。「ああ、こんな顔の人っている!まさかこの人は本当に現場からリクルートしてきたのでは!?」と思わせるキャスティングです。(↓マルコとチーロ) そう、あとでキャストの名前を見たらSalvatoreが多かったのでびっくりしたと共に納得。Salvatoreは南部の典型的な名前なので。 パスクァーレは結局中国人からのオファーを受けます。中国語の部分には字幕なし。(*イタリアの中国人は浙江省の温州人が多いので温州方言を話しているかなと思ったらそうではありませんでした。)生まれて初めて自分のやっていることを尊敬を込めて評価されたパスクァーレいわく「マエストロって呼ばれたんだよ、この俺が。。。」 話のねたばれになりますが、この主人公達はそれぞれある種の決断を迫られます。人生は自分の播いた種を刈り取っていくことだとすればトトはどうなってしまうのでしょうか。この話の中で一番若い主人公の母親を殺すという組織の指令に加担したのが一番ショックでした。 その決断の結果が必ずしも悲劇に終わっていないところにまだ救いがある、と思いたいのがロベルトとパスクァーレのケースです。ロベルトは多分ぼけの始まった老婦が持たせてくれた自家製の桃を鄭重に受け取りながら「臭いからさっさと捨ててしまえ」といったフランコに別れを告げます。裁縫家業から足を洗って長距離トラックの運転手になったパスクァーレはテレビで自分が縫ったきらびやかな服が紹介されているのを遠い目で見ています。 。) ↑ロベルトとフランコ 犯罪組織というものは歴史が長く日常生活にあまりにも深く入り込んでいるのでいまさら何をやってもどうしようもないと思わせるほどの複雑怪奇さを持っています。「それは遅れた南部のことで自分たちには関係ない」と北の人が言うのであればそれはあまりにも簡単です。このエピソードにもあったように南は北の有毒廃棄物の最終地になっているのですから。しかも手続き上は「Clean」ということになるように操作してある。 この映画の映像がその環境の惨めさと暴力の凄まじさをあまりにも力強く私の脳に焼き付けてくれたためその夜は夢にまで見てしまいました。これが本の一部でしかないとするとと本の内容はどれほどのものなのでしょうか。
by yy-mari
| 2008-05-18 07:20
| イタリア
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